遺言書を偽造から守るための対策
遺言書の防衛と偽造への対抗
自筆証書遺言と公正証書遺言のいずれも日付の新しい遺言書が有効になると定められていますが、この原則により、相続開始とともに怪しい遺言書が出現することがあります。
偽造遺言書により自分が書いた遺言書が無効にされる
自分の遺志を残そうとして遺言書を作成しても,悪意のある第三者があなたの名を騙り、日付の新しい遺言書を作成したらどうなるでしょう。
あなたは亡くなっていますので何もできず、自分の書いた遺言書は無効になり、遺志は果たされません。
怪しい遺言書に異を唱える相続人が筆跡鑑定をして疑いを晴らしてくれる。それは頼もしいことですが、このページでお伝えしてきたように筆跡鑑定を好適な条件で行うにはハードルが高く,それを相続人が乗り越えられるかは定かではありません。
偽造された遺言書に対抗するための手段
怪しい遺言書に対抗し、自分が書いた遺言書を守る手段は次の通りです。
- 定期的に遺言書を書き直して日付を更新する。年2回は更新することが望ましい。
- その際に遺言執行者に指名する人に宛てて日付入りの手紙を書き、大切に保管してもらう。
これは併せて一つの対抗手段ですので必ずセットで行います。そうすることで、あなたの死後に怪しい遺言書が出現したとき、あなたが指名した遺言執行者や相続人は好適な状況下で筆跡鑑定に臨むことができ、怪しい遺言書=偽造された遺言書に対抗することが可能になります。
なお、2.の手紙には近況報告や時節柄の話題などを含めて書き,それに加えて1.の遺言書の内容に触れることをざっくりと書いておきましょう。こうすることで、あなたの死後偽造された遺言書が出現して遺言執行者や相続人が筆跡鑑定に臨むことになったときに日付が近いあなた自身の筆跡を多く用いることができ、また、遺言書に含まれる普段使わない言葉も、あなたが書いた正当な遺言書に書かれている言葉の筆跡を使って筆跡鑑定することができますので,遺言執行者や本当に相続をさせたい人達への助けとなることでしょう。
また、遺言書を偽造しようとする者がこのページを読んだ場合、筆跡鑑定を妨害するために遺言者が普段使わない筆記具を使うことが想定されますので,2.の手紙には普段使わない筆記具(毛筆など)で御氏名や御住所などを書いた書類を付け加えておくと良いでしょう。
心無い者によって自分が書いた遺言書が無効にならないよう、本当に相続させたい人にきちんと遺産が行きわたるようにするには、防衛手段を講じて万一のときに相続人たちが対抗できるように備えてあげるしかないのです。