筆跡鑑定セルフチェック第6回

筆跡試料作成2019

筆跡鑑定の実務的な比較観察のつづき2

前回の筆跡鑑定のセルフチェックでは横画の観察についてお教えしました。「よくわからない」というご相談をいただいておりませんので,ご自身で「筆跡鑑定をやってみよう。」という方にはご理解をいただけたものと確信しています。
横に続き,今回は縦画についてお教えします。

筆跡鑑定の重要なポイント2:縦画の観察

筆跡鑑定では文字における縦棒・縦線を,縦画(じゅうかく)と呼んでいます。縦画は文字の上部から下部へ執筆される線のことを指し,書道では懸針に代表されるようなスッと引き抜くように紙から筆記具を離す書き方があったり,左右の上部へ折り返す「はね」があったりと個性が出やすく,また,本来は垂線として執筆すべき縦画が斜めの線になる方もいて,そうした部分をポイントごとに抑えて観察していきます。

縦画は,横画と比較して文字の中に少ないことに気づく方もいらっしゃると思います。観察の際は右払いや左払いなどの斜めの線:斜画(しゃかく)と混同しないようにします。

筆跡鑑定における縦画の観察では,縦画は横画や斜画とつながっていたり,交差していたりすることが多いので,そういった点を観察します。

筆跡鑑定セルフチェック「年」字サンプルー筆跡データベースから抜粋

上図は「年」字のサンプルです。縦画は最終画である第6画のみですが,上段の筆跡では第6画は第5画から途切れることなく連続していて(連続送筆といいます),書き始め(起筆部といいます)は第4画と第5画の間くらいの位置にあり,左方向へ膨らみのある湾曲した形状で,書き終わり(終筆部といいます)は懸針になっています。
中段の「年」字では,第5画から連続送筆される傾向にあり,起筆部は第3画のあたりに位置し,直線的な形状で執筆されて終筆部は「とめ」が多くみられる中「はね」もあります。
下段の「年」字は,第5画との連続送筆はなく,第6画は第2画と同じ高さから起筆され,ラテン文字の「S」字のように蛇行した形状であり終筆部は懸針になっています。

サンプルを執筆した人物は全て異なりますので極端な違いが見られますが,こうした状態が上段や中段のように複数回執筆されていればその方の恒常的な書き方である可能性が高く,筆跡の異同を判断する材料とすることができます。

筆跡鑑定における縦画の観察:注意点

第5回でも触れましたが,スキャナーを使って比較筆跡画像を作成する際は,書類が曲がらないように注意して作業を行いましょう。

今回はここまで。次回をお楽しみに!

通算103回目の筆跡試料作成

ここ横浜も梅雨本番。

でも,最近の梅雨は風情が感じられなくなりました。大雨による災害が心配です。


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