借用書の筆跡鑑定
金銭消費貸借契約証書の筆跡鑑定
いわゆるお金の貸し借りに関する借用書です。筆跡鑑定を行う際には執筆者を明らかにしたい「鑑定資料」と,比較対照する「対照資料」が必要なことは,弊所ホームページのいたるところでお伝えしていますが,対照資料の収集に苦労されている方も少なからずいらっしゃいます。
祖父の筆跡が出てきた意外な書類
「祖父名義の借用書が出てきて困っている。筆跡鑑定はできますか。」
ご相談は借用書に名前のある方のお孫さんという女性からでした。両親を亡くしており,親戚に叔母が一人いるだけなので相続人になっているそうで,生活を共にしていた祖父が最近亡くなり,一周忌を過ぎたあたりで遠縁の女性が借用書を持って現れました。それは全文が手書きで作成された金銭消費貸借契約証書でした。
ご相談いただいた女性は,祖父が亡くなってからも家や部屋はそのままにしておきましたが,一周忌を機に業者に頼んで部屋をきれいに片づけてしまったとのことで,何も残っていないということでした。
途方に暮れる中,祖父母に面倒を見てもらっていた女性は昔が懐かしく,恋しくなり,自身のアルバムなどをめくり思い出に浸りました。卒業式の写真を見ていたとき,ふと思い立ち,自分の部屋から卒業文集を探しました。ページをめくると卒業生だった自分の文集のページの隣に,祖父母が亡くなった両親の代わりにメッセージを寄稿していました。しっかりと名前も書かれており,祖父の筆跡を探し出すことができたのでした。
その後正式に筆跡鑑定を受け賜わり,祖父の筆跡ではないことが筆跡鑑定により明らかとなりました。借用書を持ってきた女性に鑑定結果を伝えたところ,それから連絡が取れなくなり,一応の解決を見たそうです。
金銭消費貸借契約証書の時効は10年
借用書は祖父が亡くなった日の10年以内の日付だったため時効の範囲内であり,筆跡が祖父のものという鑑定結果であり,それを認めると,相続人であるその女性は借用書の負債を相続することになります。
借用書の時効援用権の喪失
ちなみに,金銭消費貸借契約証書の日付から10年以上経過していても,お金を借りていることを認めてしまうと時効にはならなくなるそうです。この先が気になる方は弁護士へご相談ください。
通算106回目の筆跡試料の作成
やっと梅雨明け。その後の猛暑。それでも,
横浜は関東でも内陸と比べて気温が低い方なので,喚かないようにしないといけませんね。
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