筆跡鑑定の作業工程
事前調査
これらは鑑定資料(執筆者が不明確な筆跡)と,対照資料(執筆者が明確な筆跡)に分けられ,執筆時期の特定や第三者の筆跡が混在していないかなどを一つずつ慎重に調査していきます。
鑑定資料に不備があるときや,対照資料が不足している場合にはアドバイスをさせていただき,鑑定が可能なレベルまで引き上げさせていただいてから鑑定作業に移行します。
なお,鑑定が不能と判断される場合には,各資料を返却して終了になりますが,ここまでは鑑定料金が発生しません。
筆跡の集計と執筆時期の確定
文字集計表の作成
筆跡鑑定で大切なことは「客観性」「公平性」「透明性」を保つことですので,第三者が客観的に検証可能な集計表を作り,執筆回数の多い文字を優先することで公平性を保ち,集計結果を報告書に掲載することにより,透明性を確保できると考えています。
執筆時期による時系列順序の変換
こちらも「客観性」「公平性」「透明性」を確保するために必要であり,報告書では執筆時期の順序を提示しています。
左図はサンプルです。赤文字が鑑定資料です。対照資料を執筆時期順に並べ替えることにより,対照する資料の優先順位をつけていきます。
これらの情報は,裁判所提出用の筆跡鑑定書に掲載されます。具体的に,鑑定資料が執筆された日付と,対照資料が執筆された時期が,何日離れているのかといった,突き詰めた情報です。
認定を受けています。
上記の2項目は,日本筆跡鑑定協会の「鑑定技術の認定会議」において,2016年6月11日に適正な鑑定方法であるとして,正式認定を受けています。
鑑定作業
伝統的な筆跡鑑定
執筆時期や執筆回数によって選別された文字は,拡大鏡を使用して精細な部分の観察を行い,文字列の検査では独自のグリッドパターンを使用して,丹念に分析していきます。その他にも,コピーされた資料では,原本に罫線があるか不明なものもあります。このような資料ではA・B・C・U・ULの各罫線パターンを使用して,原本では罫線に沿って執筆されたのか否かの観察も行っています。
更に,各文字はマイクロスコープ顕微鏡による拡大検査を行います。起筆(書き始め),送筆(途中),終筆(書き終わり)など,文字を構成している送筆画の,接画状態(つけいているか,離れているか)や文字の傾き,突出の状態,筆圧(原本時),筆記具の種類(原本時)など,目視検査で行った検証の裏づけと,マイクロスコープによる新たな発見を期待するものです。
上図は40倍率で見た「優」字上部と,140倍率で見た同じ部分です。
計測的な筆跡鑑定
この作業により,比率計算に基づく「数値の異同」を鑑定結果に取り入れることが可能なため,客観的な解答を導き出すことができると考えています。
「目で見た感じ」という,あいまいな感覚にとらわれることのない,公平な鑑定のために,重要な作業の一つです。
科学的な筆跡鑑定
筆跡の斜めから光線を当て,筆圧による紙のくぼみ具合の違いを浮き上がらせます。画像の縦方向の線が,交差している横方向の線の淵を破壊している様子が観察されており,横方向の線を書いた後に縦方向の線を書いたことが観察できます。
このような観察からも,真贋の究明が可能となりますので,田村鑑定調査では“原本資料”を,最も重要な資料として位置付けています。
お客様のご理解をお願いいたします。
不可視化バーコード識別検査
これらを見抜くため,田村鑑定調査では,はがきや封筒に刻印されている,不可視化バーコード(インビジブルコード)の確認を行います。
偽造の可能性が高いと判断されるときには,報告書に記載しています。
鑑定結果のご報告
少ない文字数でも時間がかかることもございますし,文字数が大量でも,要素を掴んで比較的短い時間で終えることもあります。
鑑定結果の判断がつきましたら,速やかに報告書の作成を行います。また,ご希望により電話やメール,FAXなど,連絡の取りやすい手段で結果報告を行うこともいたします。
報告書の作成
簡易報告や鑑定事項証明書は比較的短い日数で終了しますが,裁判所提出用の鑑定書では鑑定作業の内容をまとめて文章化したり,筆跡にグラフィックスを施したりするため日数を要しますので,ゆとりをもってご依頼ください。
作成した鑑定報告書には,鑑定人の署名押印を行います。
鑑定報告書の発送
また,ページ数と冊数が多い筆跡鑑定書等の発送には,ゆうパックを使用しています。いずれの場合も,送料は弊所で負担いたします。
弊所では,お客様からお預かりした資料が万一の郵送事故などにあわないよう,発送時にはポスト投函はせず,郵便窓口で局員さんに手渡しすることを励行しています。
筆跡鑑定終了後の作業
筆跡データベースの作成
筆跡鑑定に使用された筆跡は,個人情報が特定できない「1文字」の状態で弊所のデータベースへ保存されます。データベースは文字ごとに集計・管理しています。
データベース作成は筆跡鑑定において大変重要です。
仮に鑑定作業中に,特徴的な部分を持つ筆跡があり,それが「希少な部類」に入るのか,又は「一般的な程度」なのか,という分類について,「見た目が珍しいから」というような,鑑定人の主観で判断することはできません。「希少である」と表現する場合には「希少だ」とする根拠がなくてはならず,このためにデータベースが必要なのです。100人中の1人だけの特徴なのか,それとも90人に見られる特徴なのかを,統計的に判断する必要があります。
またデータベースでは希少性の他,文字の形態や筆順・偏と旁のバランス・間違いやすい書き方なども観察しており,実際には鑑定資料と対照資料の文字は,恒常的に現れる筆跡の癖について,データベース内の同字との突合も行われているのです。
データベースは鑑定以外からも収集しており,有志の方にはご協力をお願いしています。
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