覚書の筆跡鑑定

筆跡試料作成2019

「覚書」は合意に基づく文書

一般的に経済活動は,当事者間で契約書を取り交わして行われますが,その前の合意段階で作成されるものを「覚書」といいます。また,個人間で「契約書」を取り交わすほど大げさにしたくないという場合や,すでに契約されている内容について変更する場合などにも当事者間の合意に基づいて取り交わされます。

柔らかいイメージの覚書

覚書の実態は契約書と変わらないのですが,「おぼえがき」という,訓読みで耳障りの柔らかな感触から,音読みのため堅いイメージになりがちな「けいやくしょ」よりも,軽くとらえている人もいるようです。

しかし,当事者間でトラブルが起きたときには,筆跡鑑定による執筆者の特定が求められることがあります。

全文手書きの覚書を筆跡鑑定

弊所がこれまでに筆跡鑑定を行った「覚書」は,「契約書」の筆跡鑑定より件数が少なくなりますが,覚書は契約内容に関する文書の全文が当事者のどちらかによる手書きの場合が多く,契約書は契約内容が活字で作成されたものに署名・押印するものが多いので,筆跡鑑定を行う文字数が契約書より多くなります。

筆跡鑑定にとって,鑑定を行う文字数が多いことは,鑑定精度の向上が予想されることと,それに伴い確度のしっかりした鑑定結果が得られることが期待できるのですが,覚書の場合,当事者間の筆跡がそれ単体のみであることもあり,筆跡鑑定ができない方もいらっしゃいます。

覚書を取り交わす相手とは,年賀状のやり取りぐらいはしておいたほうが良いかもしれませんね。

身に覚えのない覚書

当事者間の合意に基づき作成された(はずの)覚書とはいえ,「書いた覚えがない」とおっしゃる方はいらっしゃいます。当事者の一方がこんなことを言い出したら約束が反故にされる危険が出てきますので,正しく取り交わされた覚書であれば対応が必要になります。

逆に,「覚書に署名などをした覚えがなく,筆跡を見ても自分の字とは思えない。」とおっしゃる方もいらっしゃいます。覚書の内容により不利益を被るのであれば,偽造書類の可能性も視野に入れて調査をする必要があります。

いずれの場合でも,覚書に記されている内容により契約書と同じ効力を持つ場合もありますので,正しく対処しましょう。

通算109回目の筆跡試料の作成

筆跡鑑定の研究用試料の作成2019年9月1日

本日は防災の日。

それを意識して数日前から防災グッズの総点検を行っていますが,数年前,地元自治会の防災訓練で試食用としていただいた保存食の賞味期限が切れていました。

もったいないから食べるのですが,もうそんなに経つのか(それだけ年齢を重ねたのか)と,この数年間を噛みしめるようで,複雑な気持ちになりました。


最後までお読みいただき,ありがとうございました。