数字だけでも筆跡鑑定はできる?
数字を筆跡鑑定する
数字だけしかありませんが,筆跡鑑定は可能ですか?
このようなお問合せをいただくことがございます。筆跡鑑定は人が書いた文字の異同を判断することができますので,数字だけでも筆跡鑑定は可能です。ただし,文字数が少ない場合や執筆回数が少ない場合などは鑑定の精度が下がるため,それに連動して鑑定結果の確度も下がります。
今回は,数字のみの鑑定事例と筆跡鑑定ではどのように観察しているのかをさらりと書いておこうと思います。
筆跡鑑定における数字
1・2・3…というように計算などで用いる数字を「算用数字」と呼んでいます。アラビア数字と呼ぶのが正しいのですが,ご存知ではない方がいらしたので弊所では算用数字と呼ぶことにしています。
一・二・三…というような,原則として縦書きに用いる数字は「漢数字」と呼びます。「漢字で表す数字」で,計算などには使用しない代わりに住所や名前に使われているため,ほかの漢字と併せて筆跡鑑定しますので,漢数字のみを筆跡鑑定する機会はほとんどありません。
金額欄の数字の筆跡鑑定
数字のみを筆跡鑑定するという案件で最も多いものです。主に領収証や払戻請求書の金額欄の筆跡になるので算用数字になります。桁数があるので筆跡鑑定を行う際には個々の数字の観察の他,文字列としての検査も行います。文字列を構成する数字が同じであれば,鑑定結果の確度は高くなります。
日付欄の数字の筆跡鑑定
契約書などでは,その契約がいつ行われたのかが重要になることがあり,日付欄の筆跡鑑定を行うことがあります。多くは算用数字ですが,金銭消費貸借契約証書等で縦書きの書式になると漢数字で執筆されることもあり,おおよそ9:1の割合になります。西暦で年を書くと桁数は4桁,和暦は多くて2桁であり,月・日は2桁ですので日付を西暦で書いているのか・和暦で書いているのかなど,文字数により鑑定結果の確度が変わります。
なお,重要書類に限らず日付を書かない人が多いのですが,後々揉め事のタネになりますので,契約書などに住所や名前を書くときには日付欄にもしっかりと記入する癖をつけましょう。
答案用紙の数字の筆跡鑑定
件数は少ないものの,答案用紙に書かれた数字を筆跡鑑定することがあります。算用数字の鑑定になり,回答欄に数字を書き込むという形式の問題などでは選択した回答の番号の数字を書き込むため,数字は1文字になり鑑定結果の確度が下がります。
この他には,計算問題の回答として数字が記入されることがありますが,中学生くらいからはaやb,nといったラテン文字やカッコ等の記号も入るため数字単体での筆跡鑑定は少なくなります。
0(零・ゼロ)の筆跡鑑定
書類の形式にかかわらず数字の0は筆跡鑑定の要所に当たります。手書きの領収書などで0を続けて書く際に,0の上を線でつなぐ書き方がありますが,あれは偽造防止のために行われていたそうで,そのつなげ方にはその人なりの個性が残ります。また,ほかの数字と比べ0を極端に小さく書く人や,金額欄の枠線に対してどの位置に書いているかなど,とても個性が出やすい数字の一つです。
数字の特徴としては,0・6・8・9の「円を描く」ことや,2・3・5の「半円を描く」,4・7の「直線を組み合わせる」に分類され,恒常性の傾向を代替できることもあります。
なお,1は起筆部の形状や,送筆部の角度,終筆部の形状などに分けて観察することができますので筆跡鑑定自体は可能ですが,筆先の動きが他の数字と比べ単調であるため個性が残りにくいという性質があります。
数字を除外する筆跡鑑定人
数字は,漢字や平仮名など他の文字種と比較するとたった10種類しかなく,しかも1画で書けるものがほとんどであるため,「筆跡鑑定に適していない」として除外する筆跡鑑定人がいます。
確かにその通りかもしれませんが,しかし,きちんと向き合って観察すれば,数字にしかない筆跡の個性があることがわかるので,数字を筆跡鑑定から除外してしまうのは,もったいないことだと思います。
通算123回目の筆跡試料の作成
昨日は快晴,今日も快晴。
ここ横浜では今日も晴れ渡り,日向では気持ちよく過ごすことができます。
冬は一番好きな季節。
こういう天気の日は鑑定作業もはかどります。
最後までお読みいただき,ありがとうございます。