赤外線カメラでの写真撮影を承りました

筆跡試料作成2021

赤外線撮影で不可視の筆跡を可視化する

今回は古い文机に書かれた筆跡を赤外線撮影ができる『PENTAX KP-IR』で撮影し,筆跡鑑定に至るまでをご紹介します。
下の写真はお客様からお送りいただいた文机を弊所事務所内で撮影している様子です。文机には左右からフォトリフレクタランプ(デイライト)を照射して影ができないようにし,『PENTAX KP-IR』を三脚に載せて文机と平行になるように角度を合わせています。写真左側のノートパソコンはカメラと接続されており,微調整やシャッターを遠隔操作することができます。

赤外線カメラによる写真撮影:特殊鑑定

文机は長年の使用により黒光りするほど手垢にまみれ,また,経年による日焼けなどにより文机に書かれている文字を視認することが困難な状態にあります。
このままの状態で筆跡鑑定を行おうとしても,通常の写真撮影では下図のようになり筆跡がどこまで続いているのかがはっきりしません。

光の反射具合で視認することはできても,他者も同じように視認できている保証はなく,まして筆跡鑑定では報告書に掲載できないと意味を成しませんので,このままでは筆跡鑑定を行うことが困難です。

そこで,赤外線撮影ができるカメラの出番です。筆跡鑑定の邪魔になる手垢や日焼けなどを透過して墨書きの筆跡部分が可視化できるようにします。

赤外線撮影には以前もご紹介した『PENTAX KP-IR』を使います。このカメラは一般販売はされていないのですが警察や文化財を取り扱う研究所等で採用されており,特殊なSDカードで撮影することにより裁判証拠にも使えるという優れモノです。

赤外線撮影用カメラPENTAX KP-IR:田村鑑定調査

下図は赤外線撮影を行った画像です。墨書きが4行あることがわかります。

以降,更に至近距離で赤外線撮影を行った画像になります。

一行目は「旅から旅へ」と書かれています。

二行目は「また一枚」と書かれています。

三行目は「ぬき(ぎ)すてる」と書かれています。

四行目にはこの俳句の作者である「山頭火」の名前が書かれています。

今回の撮影では,文机に墨書きされた筆跡の細部まで鮮明に撮影できていますので,他者でも同じように視認ができ,また,筆跡鑑定書にも掲載することができるため,通常撮影では困難だった筆跡鑑定を有効にすることができました。

弊所では2011年頃から赤外線機材を導入し始め,これまでに赤外線マイクロスコープや赤外線カメラ,赤外線スキャナーをそろえて調査に対応してきましたが,『PENTAX KP-IR』を導入したことにより事務所の外でも赤外線撮影による調査が可能になり,活動の幅が広がりました。
赤外線カメラによる撮影は出張も承りますので,赤外線撮影をしてみたい古物などをお持ちの方はお気軽にお問い合わせください。

筆跡鑑定と印章鑑定の研究用試料:165回目

一都三県に発出されていた緊急事態宣言が解除されました。

「これで自由に外出を…」とはいきませんが,気持ちの上ではほんの少し楽になったような気がします。

筆跡鑑定と印章鑑定の研究用試料の作成:2021年3月21日

ここ横浜では本日,春の嵐となっています。

花粉が抑えられるのはうれしいことですが,庭先にも出られないので今日も缶詰め状態です。


最後までお読みいただきありがとうございます。
次のブログ更新まで,あなたと私に良い風が吹きますように。