酩酊状態のサインの筆跡鑑定
お酒を飲んだら筆跡が変わる
私の所属する,日本筆跡鑑定協会の研鑽会議で以前,「飲酒時に筆跡がどう変わるか」という実験を行いました。
被験者は10名に満たない数でしたが,飲酒前に氏名と簡単な文章を書いてもらい,飲酒をはじめてから1時間ごとに同じ内容の筆記を行う,というものでした。
基本的なデータとして収集できたのは,飲酒前と飲酒後では,文字の大きさや文字列の偏向具合などに変化があることや,個々の文字を同様の大きさで筆記できないこと,漢字の筆順を間違えるといった事例も見受けられました。
これらは,一般論として通用するような筆跡の変化ですので,特筆すべきことでもありませんが,「筆記実験」という場であるため,自身の意思で筆記をしていることは確かです。実験の最後の方を憶えていなくても,後の笑い話で済みます。
酩酊状態に筆記した署名には,本人の意思が存在するのか
前回のブログでも書きましたが,とりわけ署名には本人の「合意」等の意思が含まれるとされていて,重要書類には「自署」が適当とされています。
しかし,お酒を飲んで記憶をなくして次の日に青ざめる,ということはよく聞く話で,そのさなかに重要書類の署名がなされていたらどうでしょう。
酩酊状態で取り交わした,記憶のない契約等は,果たして成立するのでしょうか。
又は,酩酊状態だからと,記憶がないことを証明することはできるのでしょうか。
稀に,元日に執筆された遺言書の鑑定を行うことがあり,又は深夜営業の飲食店で使用されたクレジットカードのサインの鑑定を行うことがあります。
筆跡が崩れていても,本人筆跡と類似性が高ければ,「同一筆跡」という結果が出るのが筆跡鑑定です。
「お酒は楽しく適量を。」記憶があるうちに切り上げるのがいいようです。
筆跡試料の作成-65回目
台風の接近に伴い,ここ横浜では昨日から雨が降り続いています。
じめじめとした空気に触れると,その先にある夏の酷暑までが想起され,あきらめに似た覚悟をしている自分に気づきます。最近は,寒さより厚さの方がしんどくなってきています。
まぁ,そうは言っても,私は自治会の総務副部長などをしていますので,梅雨開け頃に開催される地元神社の夏祭りや,町内の盆踊り大会などで忙しく,落ち着けば8月のお盆時期,というのが毎年恒例なのですが。
最後までお読みいただき,ありがとうございました。