筆跡鑑定のご質問と回答(裁判・遺言状etc)
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筆跡鑑定は,コピーでもできますか?
筆跡鑑定は,原本資料で行うことが望ましいですが,原本をコピーした資料や,写真撮影した資料でも鑑定を行うことが可能です。また近年ではFAX受信文でも機種により画質が良好なものがありますので鑑定可能なケースもありますが,原本以外の書類で鑑定を行いますと暫定的な鑑定結果になることがございますので御注意ください。
なお,筆跡鑑定の初期段階ではコピー等をご提出いただいて筆跡鑑定を行い,その後,裁判所に提出するための筆跡鑑定書を作成する段階になって原本をご提出になりますと,筆跡鑑定書に掲載する筆跡を鑑定初期の筆跡(コピー等)から原本の筆跡へ入れ替える作業が発生しますので,作業代として初期段階と同等の鑑定料金を筆跡鑑定書の作成代金に上乗せしてお支払いいただくことになりますので御注意ください。
書かれた時期が離れていますが,筆跡鑑定できますか?
筆跡鑑定は,執筆者が不明な筆跡(鑑定資料)と,執筆者が明確な筆跡(対照資料)が書かれた日付(執筆時期)が近いほど鑑定精度が増します。対象者のご年齢にもよりますがプラスマイナス10年以内の範囲でお探しください。鑑定資料と対照資料の執筆時期に大きな開きがあるという場合には暫定的な鑑定結果になることがございますので,事前にご相談ください。
筆記具が違っていても,筆跡鑑定はできますか?
筆跡鑑定は硬筆と硬筆,毛筆と毛筆のように同じ筆記具どうしの筆跡で鑑定を行うことが望ましいです。硬筆と毛筆などでも鑑定は可能ですが,書体により可否が分かれる場合があり,暫定的な鑑定結果になることがございますのでご依頼の前にご相談ください。
遺言書に対し,メモ書きでも筆跡鑑定ができますか?
遺言書や契約書,手紙文,養子縁組届,中傷文,落書きなど,どんな内容を書くかにより執筆時の気構えが異なり,それが筆跡にも反映されて筆跡の様相が変わる方がいらっしゃいます。筆跡鑑定はできるだけ同じ性質の資料で行うことが望ましいので,例えば遺言書の鑑定を行う場合はお手紙や契約書など,人に読ませたり,残したりする目的で書かれた筆跡が対照資料として向いています。
筆跡鑑定を行う書類の枚数には,限度がありますか?
鑑定資料と対照資料で異なるため個別にお答えします。鑑定資料が複数ある方は集団鑑定をご利用ください。
鑑定資料の枚数について
料金が発生する基本単位は1部です。書類1枚や手紙文1通,契約日が同じ契約書1冊などが該当します。手紙文は封筒を含みます。
例えば,遺言書が便せん3枚に書かれ,「遺言書」と題された封筒に入れられて封印されていた場合,封筒1通と遺言書3枚が基本単位の1部になります。
なお,日記や帳簿など日付が連続している書類は1日分が基本単位となります。
対照資料の枚数について
料金が発生する基本単位は1名様です。1名様の筆跡であれば,何枚ございましても料金は変わりません。
数字だけでも筆跡鑑定はできますか?
日本では日常的に「漢字」・「平仮名」・「片仮名」・「算用数字」・「ラテン文字(アルファベット)」・「記号」の6つの文字種が使用されています。鑑定資料は文字種が多いほど鑑定精度は高くなりますが,「算用数字」や「記号」のみの鑑定も可能です。
ただし,暫定的な鑑定結果になることがございますので御注意ください。弊所では稀なケースとして絵文字の筆跡鑑定を行った経験がございます。
報告書の種類が多数あり,どれにすればいいか迷います。
用途やご予算に合わせ,お客様に適正な報告書をご案内いたしますので,ご遠慮なくお申し付けください。
筆跡鑑定の結果は,どのように書かれるのでしょうか?
筆跡鑑定は,鑑定資料や対照資料が原本であるか,コピーであるかといった状態や,執筆時期及び,共通して書かれている文字の数量,または筆記具や書式によって,鑑定確度が変化します。弊所では鑑定確度により,鑑定結果を以下のように分類して,報告書へ記載しています。
鑑定確度 | 鑑定結果の表記 | 表記の意味 |
最も高い | 同一人の筆跡 | 同じ人物が執筆した筆跡。 |
別人の筆跡 | 異なる人物が執筆した筆跡。 | |
高い | 同一筆跡 | 同様の慣性で執筆された筆跡。 |
不同筆跡 | 異なる慣性で執筆された筆跡。 | |
中程度 | 同質な筆跡 | 書字行動の性質が同様な部分が多い筆跡。 |
異質な筆跡 | 書字行動の性質が異なる部分が多い筆跡。 | |
低い | 類似した筆跡 | 類似した箇所が多く観察される筆跡。 |
相違した筆跡 | 相違した箇所が多く観察される筆跡。 |
弊所では,筆跡鑑定に関わる様々な要素の精密さを「鑑定精度」とし,それらを総合して得られる鑑定結果の確かさを「鑑定確度」と表示しています。
実際の裁判でどうなったかを教えていただけますか?
弊所では2022年12月までの間に,おおよそ,筆跡鑑定300案件,印章鑑定150案件,特殊鑑定60案件,指紋(掌紋)鑑定5案件もの裁判用鑑定書を作成してます。弁護士様により筆跡鑑定書以外の報告書を裁判所に提出されている方もいらっしゃいますので,実際の総数は更に多くなります。
筆跡鑑定で勝訴に貢献できた例
数年をかけて裁判の準備をしていらしたお客様が,いよいよ裁判となったとき,先方はメディア露出が頻繁な「筆跡心理学」を掲げる鑑定所と,科捜研・文書鑑定官を退職した者等が「法科学鑑定」を掲げるそれぞれ3件もの鑑定所が作成した,4冊に及ぶ「筆跡鑑定書」で対抗してきました。
弊所では裁判に先立ち「筆跡鑑定書」を提出していましたので,4件の鑑定所が提出した筆跡鑑定書への反論書を新たに作成し,裁判所に提出。4件の鑑定所が作成した筆跡鑑定書は,根拠が乏しいということで全面的に否定されると同時に,私の筆跡鑑定書が認められ、判決は全面勝訴となりました。
鑑定書の内容として「同一人か別人か」も重要でしたが,鑑定人4人の論点は「筆跡偽造の有無」に変移しつつありましたので,伝統的鑑定法に加え,送筆画や文字列を実測した比較鑑定法と,マイクロスコープ等の観察に基づく科学鑑定法を駆使して,客観的事実に基づく「筆跡の偽造はない」ことを提示しました。
裁判に勝訴できたことは,数年をかけて争われたお客様の御尽力と,弁護士様の卓越された能力の賜物と存じますが,その一端を担うことができ,更に御礼のお言葉まで賜ることができましたのは,何物にも代えられない励みとなりました。
※上記エピソードのように,裁判所へ複数の鑑定書を提出しても,「1案件」とカウントしています。
筆跡鑑定が裁判所に採用されなかった例
遺言書において,素人の方でも「同じ人の筆跡だ」と判断できるほど明白な筆跡があり,筆跡鑑定の結果も「同一人の筆跡」という判断になりましたので,裁判所へ提出する鑑定書を作成しました。
既に相手方からは他所の鑑定書が提出されていましたので,私は相手方鑑定書への反論も書くことになり,結果として都合2冊の鑑定書を提出することになりました。
裁判が進み,相手方からは私の鑑定書への反論もなく,結審となりました。原告の方も弁護士様も勝てる見込みがおありだったようですが,判決では遺言書を遺言者の筆跡として認められない,という結果になりました。
すぐに電話をいただき,耳を疑いました。弁護士様にお願いして判決理由をFAXしていただき,内容を確認すると,遺言者本人の筆跡として複数の書類が筆跡鑑定用に提出されていたのですが,その中には年賀はがきがあり,毎年のように届いていたので何枚もありました。判決理由で鑑定書を不採用とした理由は「年賀はがきのあて名の1文字が,例年の書き方と異なるから,本人以外の筆跡が混在していると考えられるため,鑑定を無効とする」ということでした。
裁判官が指摘した「書き方が異なる1文字」は,遺言書の中に書かれてはおらず,比較対照する文字ではないので,私は元より,相手方鑑定人も筆跡鑑定に含めてはいませんでした。また,「書き方が異なる1文字」の前後に書かれている文字は例年通りの書き方で違和はありません。更に,「書き方が異なる1文字」は「県」字なのですが,「目」を書いて次に「L」を書くところを,例年は1画で書いていましたが,「書き方が異なる」と指摘された文字だけは2画で書かれていました。
裁判官がどうしてその文字を取り上げたのか,なぜそのような指摘を判断理由としたのか。裁判官の心証は自由ですから何も申し上げることはありませんが,判然としないのも私の正直なところです。
当研究所がこのようなエピソードを掲載している理由は「勝訴に貢献しました」と,良い部分だけをアピールするのではなく,実際の裁判で筆跡鑑定書がどのように取り扱われたのか,その最たるものをお伝えしたかったからです。
鑑定できるのかが,わからないのですが…
「こんなこと聞いていいのかな…」という疑問や質問は大歓迎です。お気軽に田村鑑定調査へご相談ください。
弊所ではご相談いただいた方を強引に勧誘したり,後日お電話をしたりすることがありませんので,安心してお問い合わせください。
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